筆者が気になる2024年10月の化学ニュースを抜粋紹介!
あまり難しい言葉を使わずに、高校生レベルで汎用的な記事を紹介していきます
キリン ホップエキス 内臓脂肪低減に!?
ここがポイント
キリンは熟成ホップエキスをビール以外にも展開できないか思案
ホップの中のアルファ酸という苦み成分が壁
アルファ酸が「熟成ホップ由来苦味酸」に変化する
「熟成ホップ由来苦味酸」が内臓脂肪低減に効果あるかも!?
ホップ成分のアルファ酸の構造変化をキリンが読み解いていくうちに、健康食品への展開の1つとして内臓脂肪低減に利くのでは!?という内容の記事です。熟成ホップ由来苦味酸という物質こそが今回の焦点。熟成ホップを用いて、臨床試験を実施したところ、優位な結果がでたのこと。
加えて、思考時の疲労感や不安感などの精神面にも改善の効果があったというデータも得られたそうです。
同社はビール以外の食べ物、お菓子にもこの成分を展開検討しているそうです。
熟成ビール飲んで内臓脂肪低減に!?なんと幸せな!最近CMも出てきましたね。
引用:キリンHP 熟成させたホップに体脂肪を低減させる効果を発見。ホップの価値向上を追求
アンチモン 価格高騰
ここがポイント
中国の輸出審査制度導入により供給がストップ
これによってベトナム・ミャンマー品が高騰
太陽光パネル表面への適用で需要増
原子番号51 で知られる元素のアンチモン(Sb)が産出国の1つである中国の法規制で高騰しています!というニュースです。最近アンチモンは太陽光パネルの表面の透明化用途としてアンチモンソーダとして使用されています。
中国が輸出審査制度の導入+国慶節によって、需給のバランスが大崩れしたせいで需要がひっ迫し、べトナム・ミャンマー産のアンチモンが急騰 という状況です。
下記に10年間のチャート(引用:chematels)を示しますが、テンバガーと言っても良い急騰です。
ルイス酸系の触媒で使われている人もいるでしょう・・・。筆者はパラジウムで同じ状況になり、運用コストが苦しくなったことがあります。
エステー&スズキ 天然製油で乗り物酔い予防か?
ここがポイント
エステーがトドマツから抽出した天然製油が防臭効果?
本成分をスズキと協力し、車内防臭防臭剤に展開
このトドマツは自然廃棄されていたモノで、サステイナブル!
北海道産のトドマツから天然製油を抽出・研究をした結果、防臭効果があるとわかったそうです。で、これをスズキと共同研究し、車内防臭に展開した製品を発表しました。製品名は 「Air Forest YOWAN(エアフォレスト ヨワン)車用エアケアキューブ」だそうです。
トドマツは間伐が必要な樹木で、多くは自然廃棄されてしまうそうですが、これをサステイナブルに活用するという取り組みです。
記事によると、自動車に同乗する人の23%が車酔いに悩んでおり、車内のにおいと強い因果関係があるそうです。芳香剤が逆に車酔いを促進させることもあるので、消臭的アプローチは重要ですよね。
自然廃棄のトドマツから有用成分抽出とはすばらしいですね!
天然物化学出身の身としては、抽出工法でエネルギー増とかにならなければと邪推してしまうのですが。
引用:エステー×スズキ「Air Forest YOWAN(エアフォレスト ヨワン)車用エアケアキューブ」
旭化成 スチレン系熱可塑性エラストマーで半導体市場開拓
ここがポイント
スチレン・ブタジエン+末端にアミノ基付与のエラストマー
柔軟性、耐久性、制振性、低誘電性に加え流動性良好
エポキシ素材中の分散性良好、無溶剤混合が可能
旭化成さんのスチレン系熱可塑性エラストマーにて、アミン変性処理をした新グレードを開発したそうです。もちろんエラストマー(弾性を持つ樹脂)である以上は柔軟性や耐久性、制振性、低誘電性はクリア。これに加えて低粘度であるため、熱硬化性樹脂に溶剤を使わずに混合ができるとのこと。
今回用途として着目されたのが、エポキシ樹脂への添加です。今まではエポキシ樹脂の流動性が出る温度以下でエラストマーを添加すると分散不良が起こっていました。しかしながら低粘度のスチレン系熱可塑性エラストマーならば、このエポキシに適用できるのでは?という思想です。
エポキシ+エラストマーということで、半導体向け封止材をターゲットに製品展開をしていく という記事でした。
ちなみに同社は2024年3月にエラストマー系は販売価格を値上げしています。このご時世、価格転嫁は仕方ないです。
引用:旭化成HP 製品情報 | 旭化成のエラストマー (SEBS・SBS) 総合情報サイト